論文を書くことで得られるスキル

論文を書くことを学生に薦めている。何故か。
それは、論文を書くことによって、さまざまなスキルが得られるからである。

例えば・・・
文章全体を論理的に構成する技術
エクセルできれいなグラフを書く技術
文献を検索する技術
英訳をする技術

これらは、教科書を読んで、座学で身に付く技術ではない。まぁ、付かないわけではないが、少なくとも私の経験から言えば、百聞は一見に如かず、ならぬ、百読は一筆にしかず、である。

例えば、グラフ。
よくコンピュータの授業で例題を元にグラフを描く授業をしている。確かに、こうすればグラフが出来ますよ、というのは勉強になるが、さらに突っ込んで、どういうグラフを、どういうスケールと色合いで見せるかは、論文全体とのバランスで決まるものなので、「グラフの作り方は知ってるけど、何が適切なグラフか?」という疑問には答えられない。

文献検索技術にしてもそうだ。データベースの使い方は、授業で習うこともあるだろう。しかし、自分の論文に適切な引用文献が何なのか?とか、このキーワードでは、何万も文献が出てきて、どれを使えばいいかわからない。というのも、論文の方向性がわからないと、絞りようがない。さらに、具体的には、論文の引用方法なども、論文の種類によって違う。

英訳について、普通の学生は、英文を書くことに慣れていない。まぁ、その前に、論文を書くための日本語に慣れていないということもあるが、日本語の論文につける、サマリーは英作文の課題としてはうってつけである。

これら各々の技術は、実際に使われる場合には単独で使用されるものではない。論文なりリポートなり、完成した「文書」のパーツとして使われるわけだ。そのミニマムで雛形となる文書が論文なのである。
だから、論文を書き始めると、これらの技術が要請されるわけで、論文を書くプロセスでその全てを満たさないと、最終的に仕上がらないわけだ。

個々の技術を授業で習っているうちは、なんとなくわかったように思えるのだが、いざ、実際の論文を前にすると、中途半端に覚えていることが多々あることに気づく。えっと、グラフの大きさはどうやって変えるんだっけ?とか、論文の引用の仕方はどうするんだっけ?などなど、知らないことが山ほど出てくる。

「何がわからないかが、わからない」

学生のみならず初学者に共通するものはこれだ。だから「何かわからないところはある?」と聞いても、「別にありません」となる。

わからないところを抽出し、それに対するスキルを得る作業、それが論文を書くことに詰まっているのだ。